鯨 岡 校 長 - 御 寄 稿
【 淡交会 会報83号より 転載 】       最終更新日: 2019/12/18   
中高一貫教育の醍醐味 校長 鯨岡 廣隆
 本校は平成十八年四月に
附属中学校を開設しました。
併設型中高一貫教育校とし
ての新たな歴史を歩み始め、
令和二年度には高校百二十
周年、附属中学校開校十五
周年を迎えます。記念式典
は令和三年匕月十七日(土)
です。そして令和三年度か
らは高校からの募集を停止
し、その後附属中学校から
の進学者のみの学校となっ
ていきます。
 平成十年の学校教育法改
正によって、公立学校にお
いても中高一貫教育校の導
入が可能となって以来、中
等教育学校、併設型、連携
型の三つのタイプの中高一
貫教育校が各都道府県で開
設されてきました。





 今回の高校募集停止はこ
れまでの中高一貫教育校と
は異なります。併設型であ
りながらも高校からの入学
者かいない第四のタイプの
中高一貫教育校という新た
な道を進むこととなります。
 明治三十四年(一九〇一
年)四月一日に開校した東
京府立第三中学校は五年制
です。当時人学試験は三倍
程度であったと記録されて
います。また、浪人して入
学した生徒も多く十五歳で
入学した者もおり、落第し
て進級できなかった生徒も
いたようです。男子生徒し
か人学できなかった時代と
は社会情勢は大きく変化し
ましたが、高校募集停削は
約百二十年前の本校創設当
時の学校制度への原点回帰
とも言えると思います。





 中高一貫教育とは、言う
までもなく後期義務教育と
前期高等教育の六年間を一
貫した教育体制で行うとい
うものです.
 小学校を卒業した十二歳
の少年少女が成人になるま
での発育発達の著しい時期
に、どのような環境でどの
ような友人と過ごすかはそ
の後の人生に多人な影響を
もたらすものです.
 日々生徒たちを見ていて
も、あの時のあの生徒が随
分と成長したものだとつく
づく思う時があります。体
だけでなく心も豊かに育っ
た姿は、まさに保護者だけ
でなく教師にとっても教育
の醍醐味と言えます。
 多くの学校は中学校三年
間、高校三年間という区切
りの中で日々生徒指導に当
たるわけですが、六年間手
塩にかけて育てる在りよう
はまさに教師冥利に尽きる
と思います。
 これまで附属中学校から
の生徒と高校から入学して
きた生徒の二重の指導構造
の中で、互いに高め合い切
磋琢磨できる教育環境の中
で大きな成果を上げてきま
した。今後は純粋な一貫指
導体制を醸成し、これまで
以上の成果をもたらすこと
が期待されることとなって
いくでしょう。





 山深く森林に入ると、樹
木が一列に並んでいるよう
に見えることがあります。
不思議と互いに距離を置き、
樹齢を重ねています。足元
の太い倒木をじっくり見る
と、朽ちた表面に小さな針
葉樹がたくさん生えていま
す。これらが種子からの新
芽です。現在そびえ立つ木々
も、根元が浮かんで脚の上
に立つような形であること
が多く、これもかつて土台
となる朽ち木があった証し
です。この世代交代の仕方
を、倒木更新と呼びます。
 時には数十トン以上にも
なる樹木の遺体は、ゆっく
り土に還る過程で、次代の
木々の大切な苗床となりま
す。様々な虫や菌もまた、
朽ち木で生活しながらそれ
を餌とします。さらに、よ
り高次の捕食者がそれらの
小さな生き物を餌資源とし
て、豊かな森の生態系を創
っています。
 土壌の裾野が広く栄養に
満ち溢れている朽木ほど次
の世代の巨木を育てます。
そしてその巨木が倒れ朽ち
果てていく過程で新たな芽
が育まれる息の長い循環を
形成します。倒木更新は森
林だけでなく、学校の歴史
と伝統の継承にも言えるこ
とです。そして人の世代交
代にも当てはまります。中
学生・高校生という新芽を
見ながら身を以てこのこと
を噛み締めています。
【 令和元年 5月 校長 御寄稿 】