第7回 環境セミナー報告へリンク      (スマホ)   作成日:2021/01/22 by AM   
  

 地球温暖化の進行が止まらず、世界各地で、温暖化の影響と思われる豪雨や干ばつなど極端現象が顕在化する中で、
今、世界中の自治体で「気候非常事態宣言」(Climate Emergency Declaration=CED)を行う動きが、 燎原の火のごとく広がっている。
 周知のように、2015年に歴史的なパリ協定が締結され、世界の気温上昇を2℃未満、できれば1.5℃未満に 抑制することが約束された。
その後、2018年10月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「1.5℃特別報告書」が公表された。
しかし、既に、世界の平均気温は、工業化以前と比較して1℃上昇し、現在の温室効果ガス排出傾向では温暖化がさらに進み、 早ければ、2030年頃には1.5℃を突破する可能性が指摘されている。
 こうした中、2016年12月に、オーストラリアのデアビン市が世界で最初に「CED」を行った。
その後、2019年に入ると気候非常事態宣言は劇的に拡がった。
CEDAMIA(Climate Emergegency Declaration and Mobilization in Action)のホームページによると(2020年3月11日に検索)、 現在、世界28か国の1467の国、地方政府・自治体がCEDを行っていて、カバーする人口は8億2000万人に達し、 世界人口77億人の1割を超えた。
 日本でも、当学会の働きかけもあって、遅ればせながら、長崎県壱岐市が2019年9月に日本で第1号となるCEDを行い、 次いで、鎌倉市議会、長野県議会、長野県白馬村、長野県千曲市議会、福岡県大木町、鳥取県北栄町議会、 大阪府堺市がCEDを行った。
2020年に入ると、岩手県陸前高田市など東北5県のSDGs未来都市5市が、揃ってCEDを行った。
さらに鎌倉市、神奈川県がこれに続いてCEDを行い、CEDAMIAのホームページには、合計15自治体が登録を果たした。
  https://www.cedamia.org/global-ced-maps/
 東京都でも2019年12月27日、「気候危機行動宣言」(Declaration of Tokyo Climate Crisis Mobilization)及び2050年の 温室効果ガス実質ゼロを見据えた「ゼロエミッション東京戦略」を世界に向けて発信した。
行動宣言では、Emergency(非常事態)でなく、Crisis(危機)としたためか、上記のホームページには登録されなかった。
 世界で、国や自治体にCEDがこのように急速に広がった背景には、スウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリが、 2018年8月20日に首都ストックホルムの国会横に、ひとりで座り込んだことから始まる若者たちの抗議行動 (Global Climate Strike)の世界的な広がりがある。
 グレタは以来、毎週金曜日に気候ストライキを続行したため、「Fridays for Future」(未来のための金曜日)運動と 呼ばれるようになった。
この運動は、SNSなどで拡散し、世界の青少年が一斉に気候ストライキを行う活動に広がった。
2019年5月24日(金)には、世界150か国で、180万人が参加して気候ストライキが実施されたと聞く。
気候ストライキは、2019年9月20日(金)には、400万人のグローバル気候ストライキにまで拡大した。
 日本でも、2019年9月20日(金)、東京、京都、大阪を初め、各地でグローバル気候マーチが展開され、 東京の2800人を筆頭に、全体で5000人が抗議行動を起こすとともに、東京都や大阪市等に対し、 気候非常事態宣言を発表するように迫った。
 このような、未来を担う若者たちの積極的な行動も後押しとなって、わが国会でも、2050年のカーボンニュートラルに向け、 「気候非常事態宣言」の全会一致の決議を目指す「超党派議員連盟」が、2020年2月20日に発足したと聞く。
原発、石炭火力、再エネ等、基本的な政策で、意見の一致は見てはいないものの、危機感の共有を図ることから 始めるとのことである。
 世界的な潮流からは、2周も3周も遅れた日本の動きであるが、持続可能な社会を構築し、維持することは、 未来を生きる若者たちから負託された大人たちの責務である。
 私たち一人ひとりの心構えと実践行動がそれを可能にすると確信している。

 環境委員 中村 晴永(55回)
   (淡交会報第84号より転載)

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