【 淡交会 会報81号より 転載 】       最終更新日: 2019/01/03   
 朝五時半始発バスに乗る。
まだ闇であるが満員である。
こんな時間に乗る人達は朝
早い仕事か、勤務場所が遠
い人達なのであろう。電車
に乗り換える。段々しらじ
らとしてくる。中央線も高
架となったため、街の様子
を上から見ることができる
ようになった。びっしりと
詰まった建物、ごちゃごちゃ
として統一性はない。よく
もこれだけ隙間なく家があ
るものだと思う。隅田川を
渡る頃には陽も上がり、街
はいよいよ活動を開始し始
めた。錦糸町駅で降りると
向かいの上り線は既に通勤
ラッシュである。学校に着
くと何人かの生徒が登校し
ている。いつも早いなあと
感心する。両国高校は間も
なく匸一〇周年を迎える。
日々この場所に立ち、歴史
を刻んできた先人たちへの
敬意の念を抱いている。
 この地で不動の伝統を築
いてきた本校ですが、時代
とともにその学びの内容や
方法は幾多の変遷を経てき
ています。今般我が国のナ


ショナルスタンダードであ
る学習指導要領の改訂があ
り、本校においても順次教
育課程を改善し、教科書や
授業内容・方法のリニュー
アルをしていく段階にきて
います。中学校や高校で学
ぶものは、社会で最小限必
要なことや学問の基礎・基
本であることは時代が変わっ
ても変わるものではありま
せん。しかし、この度の改
訂では「主体的・対話的で
深い学び」というキーワー
ドに代表されるように、受
動的な学びの姿勢から、よ
り積極的に児童・生徒の能
動性を引き出し、ものすご
いスピードで進化し続ける
社会に主体的に対応してい
くことや、一方で国際問題、
地球環境や経済格差・貧困
を直視しグローバルに対峙
していく姿勢を育んでいく
時代へと向かうこととなっ
ています。
 高校では、これまで「総
合的な学習の時間」と称さ
れていた分野が「総合的な
探究の時間」と進展し、
「理数探求」という新たな
分野も登場しています。






「地理総合」「地理探究」
や「歴史総合」という日本
史と世界史を融合した歴史
学習などが新たに設けられ
てきたことにも特徴があり
ます。また、高校ではこれ
まで学習評価を数字で表現
してきましたが、これから
は生徒の学習状況を観点別
に評価し、その上で評価・
評定していくという改善点
も特徴的なものと言えます。
当然大学入試も連動して改
革が進み、「大学入学共通
テスト」の導入も決まって
います。大学は、いずれ欧
米型に様変わりしていくこ
とになるでしょう。今次改
訂は来年度からの移行期間
を経て二〇二二年完全実施
となります
 中学校では、次年度から
の移行期間を経て二〇二一
年度から全面実施となりま
す。中学校は義務教育の仕
上げ段階であり、国民とし
ての基礎的教養をしっかり
と身に付けることに変わり
はありません。その中で。
「社会に開かれた教育課程」
がキーワードとなっていま
す。コンピュータや人工知
能化が急速に進む社会にあっ
て、モラルやリテラシーの
素養を確実にし、それらに
振り回されることなく使い
こなしていくことが求めら
れています。このため中学
校においてはこれまでの学
習に加え、プログラミング
教育や道徳教育の充実によっ
て適切な判断や行動ができ
るようにしていこうとする
のが特徴と言えます。
 今東京は二〇二〇五輪に
向かって大きく進展してい
ますが、真に大切なことは、
時代を読みその先を見据え
て対策を考え準備していく
ことだと思います。
 二〇二一年、本校は創立
一二〇周年を迎え、附属中
学校は開設一五周年の節目
となります。例えカリキュ
ラムや学習内容が時々に変
遷しようとも、本校の価値
やそこで学んできた生徒達
の精神性は変わることなく、
さらに磨きをかけていくこ
とが必要でしょう。
 私自身今後とも、隅田川
の川面を見ながら、社会に
おける学校の存在意義や、
地域における本校の果たす
役割を問い続けていきたい
と考えています。
『 両国の内包と外延 』


【 訂正 】 前号第80号の校長 挨拶の文中、「清龍社」は「青龍社」の誤りでした。

【 平成30年 5月 校長 御寄稿 】